海辺のカフカ #012 by haruki_m
Posted by tetsu shirahashi | under /expressiveness |Add comment | No Trackbacks | 16:46:00 / 22 Jun 2007
「オレの見る限りでは、あんたは頭は悪くないみたいだけどね」
「そうでありましょうか」とナカタさんは首をひねって言った。「しかしオオツカさん、今となりましてはナカタはもう60をとっくに過ぎてしまいました。60を過ぎますと、頭の悪いことにも、みんなに相手にされないことにも、慣れてしまいます。電車に乗れなくても生きていけます。お父さんはなくなりましたので、もうぶたれることもありません。お母さんもなくなりましたので、もう泣くこともありません。ですので、今さら急にお前の頭は悪くないと言われましても、ナカタはかえって困るかもしれません。頭が悪くなくなったせいで、知事さんからホジョがいただけなくなるかもしれません。とくべつパスで都バスに乗れなくなるかもしれません。なんだ、お前は頭が悪くないじゃないかと、知事さんにしかられたら、ナカタは返事のしようがありません。ですので、ナカタはこのまま頭が悪いままでいいような気がするのであります」